おすすめの本紹介①

こんばんは、Sラボチューターの佐々です。


皆さんは、今年の夏はどのように過ごしましたか。


この夏は東京に限らず日本各地で新型コロナウイルスの感染者数が急増し、感染対策のために出来る限り外出を控えて家で過ごした、という人が多いのではないでしょうか。 僕もその一人です。東大の夏休みは7月末から9月末までと長いので、その時間を使って読書や映画鑑賞をしました。


ということで、今回は僕が夏休みに読んだ本からオススメの一冊を紹介したいと思います。 ▶︎川端裕人『「色のふしぎ」と不思議な社会』(筑摩書房、2020年)


この本は、2年の春セメスターに受講した心理の授業の先生が紹介してくださいました。


「色覚」は、非常に不思議で興味深い研究対象です。 そもそも「色が見える」とは、どのような体験なのでしょうか。 本書では以下のように説明されています。 「色というのは、光(電磁波)そのものの属性ではなく、人の感覚(色覚)が作り出しているものだ。 赤いリンゴを見ると、リンゴの表面に「赤」がくっついているように感じるけれど、決してそうではない。 リンゴの表面から目に届く光の特徴に応じて、ぼくたちが脳内で色を塗ってえられるのが、「赤い」という色の感覚なのである。」(p.26) つまり、リンゴ自体に「赤」という色がついているわけではなく、私たちの脳がリンゴは「赤い」と処理しているに過ぎないわけです。 ということは、そもそも自分の脳と他人の脳は違うわけですから、自分の視覚体験と他人の視覚体験は必ずしも同じものではないのです。 具体的に言えば、自分の見ているリンゴの「赤」と他人の見ているリンゴの「赤」が同じものだという保証は全くない、ということです。


本書における中心的なトピックは、「先天色覚異常」です。 筆者は、日本社会において「先天色覚異常」が社会的あるいは科学的に、従来どのように扱われてきたのかを詳細かつ批判的に検討しつつ、色覚とは「多様性」と「連続性」を有するものだ、と結論づけています。 もはや、各人の色覚を「正常」と「異常」に二分することはナンセンスであり、今まで社会的あるいは科学的に自明のものとされてきたその境界線は恣意的なものに過ぎないというわけです。


実は僕自身も、色の区別がうまく出来ない、という経験を小さな頃から19歳になる今まで何度も経験してきました。 例えば、赤色のポスカと茶色のポスカを見分けられなかったり、黒板にチョークで書かれた赤文字と青文字が見分けられなかったり、という感じです。 何より大変だったのは、高校生の時に使っていた地理の資料集に掲載されていた、様々な色で塗り分けられた世界地図を解読することでした(受験で地理を使用したので解読には必死でした)。 本書の中でも詳細に説明がなされている、石原式色覚検査表による検査も高校の時に実際に受けたことがあります。 「色覚テスト」のような名前で、ネット上で試してみたことがある人もいるかもしれません。 色覚が「正常」な人が簡単に見分けられる数字が、色覚が「異常」な自分には少しも見分けられない、というのは本当に不思議なことです。 色が正確に見分けられない、というのは時に不便がありますが、ほとんどの場合生活上問題はありません。


そんなわけで、僕はこの本の内容がまさに自分のことのように感じられ、あっという間に読み終えてしましました。

近年、あらゆる分野で「多様性」が叫ばれています。 「色覚」という、私たちにとって身近だけれども実はよく知らないトピックを切り口にして、「多様性」について考える良い機会になると思います。


ぜひ本書を手に取ってみてください!

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